
【症例02】
左右前十字靭帯断裂・左右膝蓋骨内方脱臼
(柴犬)
痛がって歩きにくい/立ち上がるのが大変
前十字靭帯とは膝関節の中にある靱帯です。 犬が運動するときに膝関節が安定して屈伸運動ができるように、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)を繋ぐ役割を担います。
前十字靭帯が損傷すると膝関節では強い炎症が起こり始め、生涯にわたって重度な痛みと跛行(はこう)を引き起こします。
以下の2種類に大別されます。
・完全断裂:前十字靭帯を構成する線維が全て切れてしまう
・部分断裂:前十字靭帯を構成する線維が一部だけ切れてしまう
片足に前十字靭帯の断裂が確認された犬は2年以内に40%の確率でもう片足の前十字靭帯も切れてしまうと言われています。そのため早期の治療が推奨されます。
加齢により靭帯の損傷が徐々に進んでいき、激しい運動をきっかけに断裂が起こると考えられています
▼断裂モデル(アニメ)実際に歩いてもらいどのような歩様を示すのか記録、観察をします。
①痛いと思われる足の特定
②痛みの程度
③他の疾患との鑑別
に役立ちます。
メリットが多いため、詳しい問診の前にも実施されることが多い検査です。
膝の触診を行い、膝関節の状態を体表面から確認します。 この段階で前十字靭帯の断裂が確認できる場合もあります。 また膝だけではなく、他にも痛みの原因がないか調べます。
膝、および股関節にわたり後ろ足全体の撮影を行います。
レントゲンで靭帯は見えませんが、
①靭帯が損傷したことによる骨の変位
②関節炎の徴候
が見られることがあります。また、撮影された画像は手術計画を立てるためにも使われます。
上記の検査で靭帯の断裂が疑われた場合に
Q.それが完全断裂なのか?
Q.それとも部分断裂なのか?
Q.部分断裂だとすればどの程度負傷しているのか?
を膝の内部にスコープを入れ、直接確認する検査です。
TPLO法は脛骨の斜面の角度を矯正し、緩やかな傾斜にすることで脛骨が前へ飛び出さないようにする手術です。
<メリット>切れてしまった靭帯そのものを再建するのではなく、失われた靭帯の機能を手術用の太くて丈夫な糸を用いて代替する方法です。 具体的には種子骨と脛骨と呼ばれる骨に穴を開け、そこに糸を通して脛骨が前に飛び出さないように輪をかける形で設置します。
<メリット>数ヶ月の間、体長の1.5倍のケージやサークルの中で休ませる方法です。 原則ケージ外への移動を禁止し、同時に食事療法による体重制限も行います。 膝関節を温存することで症状の軽減が起こる場合があります。
・SURGEON BOOKS 整形外科疾患に対する系統的検査STEPS 犬の跛行診断《10003924》P147-168
・いざという時に役立つ!犬と猫の骨折・脱臼の初期対応
監 本阿彌宗紀 望月学 P228-230
・SMALL ANIMAL SURGERY 小動物外科手術 下巻 著 THERESAWELCH/FOSSUM/HEDLUND/HULSE/JOHNSON/SEIM/WILLARD/CARROLL 訳/作野幸孝 監/松原哲舟 P957-964