SYMPTOMS/CASES

膝蓋骨脱臼とは?

膝蓋骨(膝のお皿)が本来あるべき位置からずれてしまうことで、歩く際に痛みや違和感を覚える病気です。

症状の分類

[膝蓋骨脱臼の種類]
膝蓋骨脱臼の種類

膝蓋骨が内側にずれる内方脱臼、外側にずれる外方脱臼、両方向にずれる両方向性脱臼に分類されます。


グレード分類(重症度分類)

[膝蓋骨脱臼のグレード分類]
膝蓋骨脱臼グレード分類

膝蓋骨脱臼はその重症度により4つのグレードに分類されます。数字が大きいほど重症度は高くなります。これらの分類は治療方針の決定のためにも使われます。

  • グレード1
  • 膝蓋骨脱臼グレード分類

    膝蓋骨は人の手で一時的に脱臼できますが、離すと自然に元の位置へと整復できます。


  • グレード2
  • 膝蓋骨脱臼グレード分類

    自身の膝の動きで脱臼、整復を繰り返します。


  • グレード3
  • 膝蓋骨脱臼グレード分類

    膝蓋骨はほぼ脱臼したままの状態です。人の手で一時的に整復できますが、膝関節の屈伸で再び脱臼します。


  • グレード4
  • 膝蓋骨脱臼グレード分類

    常に膝蓋骨が脱臼しています。用手による整復は不可能です。

膝蓋骨脱臼の原因

複数の要因が考えられますが、主な例をご紹介します。

  • 周囲の筋肉によって膝蓋骨が内側や外側に引っ張られ過ぎてしまう
    [膝蓋骨周辺の構造]
  • 膝蓋骨がはまっている骨の溝(滑車溝)が浅く、少しの力で膝蓋骨が移動してしまう
    [膝蓋骨脱臼が起こる原因]

  • 膝蓋骨脱臼でみられる症状

    [膝蓋骨脱臼の症状]

    ・時折脱臼が起こっている後ろ足を挙上する
    ・がに股、もしくは内股の姿勢をとる

    膝蓋骨脱臼の検査・診断

    <歩行検査>

    実際に歩いてもらいどのような歩様を示すのか記録、観察をします。膝蓋骨脱臼が疑われる足の特定やその程度、他の疾患との鑑別に役立ちます。動物への負担も少なく、費用もかからないため問診の後に実施されることが多い検査です。


     

    <身体検査>

    膝の触診を行い、膝関節の状態を体表面から確認します。膝蓋骨脱臼の程度を確認するのはもちろん、この段階で前十字靭帯の断裂が確認できる場合もあります。また股関節や足先など膝の他にも痛みの原因がないか調べます。


     

    <レントゲン検査>

    ・どこを撮影するのか?
    膝、および股関節にわたり後ろ足全体の撮影を行います。

    ・何を見ているのか?
    膝蓋骨脱臼が確認された足の状態や他にも病気が無いか詳しく見るために実施されます。

    ・どのような異常が見られるのか?
    脱臼が軽症であればほぼ正常もしくは膝蓋骨の転移が見られる程度です。重症では転位した膝蓋骨に加え、さまざまな骨格変形が認められます。また、同時に前十字靭帯の損傷が起きていないかも確認できます。


    [膝蓋骨内包脱臼を示したレントゲン側面像]
    膝を横から見たレントゲン画像。膝のお皿(膝蓋骨)が内側にずれています

    膝蓋骨内包脱臼を示したレントゲン側面像
      [膝蓋骨内包脱臼を示したレントゲン正面像]
    膝を正面から見たレントゲン画像。両側の膝のお皿(膝蓋骨)が内側にずれています

    膝蓋骨内包脱臼を示したレントゲン正面像

    膝蓋骨脱臼の治療方法

    <手術名>
    ・脛骨粗面転移
    ・滑車溝形成術
    ・筋膜リリース(外側支帯重層術、大腿四頭筋解放術)
    ・関節包縫縮術
    ・外側補強術
      複数の術式があり、いずれも膝蓋骨の脱臼を防ぐために行われますが、症例によって術式の組み合わせを使い分けます。


    参考文献

    ・CLINIC NOTE No.221 2023 Dec 12月号 犬の膝蓋骨脱臼 ~一次診療で生かす、診断・治療の羅針盤~《00082312》
    ・SURGEON '15/3月号(110号)膝蓋骨脱臼(前編) 病態・診断・治療《00051503》
    ・VETERINARY BOARD 2021 JANUARY No.21 膝蓋骨脱臼~再脱臼を起こさせないための治療選択と治療のポイント~《00172101》
    ・SURGEON BOOKS 整形外科疾患に対する系統的検査STEPS 犬の跛行診断《10003924》P139-144

膝蓋骨脱臼