【症例02】
左右前十字靭帯断裂・左右膝蓋骨内方脱臼
(柴犬)
痛がって歩きにくい/立ち上がるのが大変
膝蓋骨(膝のお皿)が本来あるべき位置からずれてしまうことで、歩く際に痛みや違和感を覚える病気です。
膝蓋骨が内側にずれる内方脱臼、外側にずれる外方脱臼、両方向にずれる両方向性脱臼に分類されます。
膝蓋骨脱臼はその重症度により4つのグレードに分類されます。数字が大きいほど重症度は高くなります。これらの分類は治療方針の決定のためにも使われます。
膝蓋骨は人の手で一時的に脱臼できますが、離すと自然に元の位置へと整復できます。
自身の膝の動きで脱臼、整復を繰り返します。
膝蓋骨はほぼ脱臼したままの状態です。人の手で一時的に整復できますが、膝関節の屈伸で再び脱臼します。
常に膝蓋骨が脱臼しています。用手による整復は不可能です。
複数の要因が考えられますが、主な例をご紹介します。
・時折脱臼が起こっている後ろ足を挙上する
・がに股、もしくは内股の姿勢をとる
実際に歩いてもらいどのような歩様を示すのか記録、観察をします。膝蓋骨脱臼が疑われる足の特定やその程度、他の疾患との鑑別に役立ちます。動物への負担も少なく、費用もかからないため問診の後に実施されることが多い検査です。
膝の触診を行い、膝関節の状態を体表面から確認します。膝蓋骨脱臼の程度を確認するのはもちろん、この段階で前十字靭帯の断裂が確認できる場合もあります。また股関節や足先など膝の他にも痛みの原因がないか調べます。
・どこを撮影するのか?
膝、および股関節にわたり後ろ足全体の撮影を行います。
・何を見ているのか?
膝蓋骨脱臼が確認された足の状態や他にも病気が無いか詳しく見るために実施されます。
・どのような異常が見られるのか?
脱臼が軽症であればほぼ正常もしくは膝蓋骨の転移が見られる程度です。重症では転位した膝蓋骨に加え、さまざまな骨格変形が認められます。また、同時に前十字靭帯の損傷が起きていないかも確認できます。
<手術名>
・脛骨粗面転移
・滑車溝形成術
・筋膜リリース(外側支帯重層術、大腿四頭筋解放術)
・関節包縫縮術
・外側補強術
複数の術式があり、いずれも膝蓋骨の脱臼を防ぐために行われますが、症例によって術式の組み合わせを使い分けます。
・CLINIC NOTE No.221 2023 Dec 12月号 犬の膝蓋骨脱臼 ~一次診療で生かす、診断・治療の羅針盤~《00082312》
・SURGEON '15/3月号(110号)膝蓋骨脱臼(前編) 病態・診断・治療《00051503》
・VETERINARY BOARD 2021 JANUARY No.21 膝蓋骨脱臼~再脱臼を起こさせないための治療選択と治療のポイント~《00172101》
・SURGEON BOOKS 整形外科疾患に対する系統的検査STEPS 犬の跛行診断《10003924》P139-144